○日 程 | : | 2019年9月13日(金)・14日(土)・15日(日) |
○会 場 | : | 石川県立図書館(〒920-0964 石川県金沢市本多町3-2-15) |
○参 加 費 | : | 会員2,500円・非会員3,500円 |
○懇親会費 | : | 6,500円(飲物代等込)(会員・非会員ともに同額)*参加費・懇親会費は,参加当日,受付にてお支払ください。 |
○懇親会場 | : | 郷土居酒屋五郎八(〒920-0988 石川県金沢市木倉町3-3)TEL:076-222-5680 |
○申込方法 | : | 次の事項を明記のうえ,電子メール,またはハガキにてお送りください。
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○申 込 先 | : | ■ハガキ:〒101-8301 東京都千代田区神田駿河台1-1 日本図書館文化史研究会事務局 ■電子メール:office「アットマーク」jalih.jp *上記,「アットマーク」は@に変更してください。送信件名に「研究集会参加」とお書き願います。 |
○申込締切 | : | 9月4日(木)(必着) |
●9月13日(金):オプショナルツアーA(要事前申込)● | ||||||
13:00-14:00 | 金沢市立金沢海みらい図書館見学 | |||||
(移動 北陸鉄道バス) | ||||||
15:00-16:00 | 金沢市立玉川図書館見学 |
●9月14日(土):会員総会・シンポジウム● | ||||||
10:00-11:30 | 石川県立図書館見学 | |||||
11:30-12:45 | 運営委員会・昼食 | |||||
12:45から | 受付開始 | |||||
13:00-14:00 | 会員総会 | |||||
14:10-14:20 | 開会挨拶 | |||||
14:20から | ★シンポジウム★ 「図書館史研究と資料保存」 | |||||
14:20-14:40 | 趣旨説明:鈴木宏宗(国立国会図書館) | |||||
14:45-15:25 | 登壇者1:鷲澤淑子(石川県立図書館) | |||||
15:30-16:10 | 登壇者2:石川敬史(十文字学園女子大学) | |||||
16:15-16:40 | 討論 | |||||
17:30-19:30 | 懇親会 郷土居酒屋五郎八(〒920-0988 石川県金沢市木倉町3-3) TEL:076-222-5680 |
●9月15日(日):個人発表,オプショナルツアーB● | ||||||
9:15-9:30 | 受付開始 | |||||
9:30-10:20 | 発表1 | 「明治初期,岐阜県下に於ける元県学校所蔵書籍の行方 ―元岩邑県支那学校蔵書の払い下げと上納―」 膽吹覚(福井大学) | ||||
10:25-11:15 | 発表2 | 「図書館行政家としての中田邦造 ―中田邦造関係資料の利用可能性―」 小林昌樹,鈴木宏宗(国立国会図書館) | ||||
11:20-12:10 | 発表3 | 「八幡市における移動図書館史 ―自動車文庫と移動児童館車の活動を中心に―」 石川敬史(十文字学園女子大学) | ||||
12:10-13:30 | 昼食 移動 | |||||
13:30-15:30 | ★オプショナルツアーB:金沢文圃閣バックヤード見学(要事前申込) |
★シンポジウム★「図書館史研究と資料保存」 | |
趣旨説明:鈴木宏宗(国立国会図書館) 近年,図書館の運営に関わる文書・業務資料や図書館員の個人文書などの資料に光が当てられている。様々な資料も徐々に公になってきている。しかしながら,それらの位置づけや保存については,どこまで検討されているのか不明である。そこで,今回の研究集会では,図書館の歴史的研究における資料とその保存や利用等について考えるきっかけとなることを目的として,「図書館史研究と資料保存」というテーマを設けた。図書館史研究と資料についての概略を導入として述べた後,実際に図書館に関連する個人文書と運営資料の整理等に携わった経験のある2名の方に御登壇いただき,それらの資料の特徴や傾向,意義,保存などについて,具体的に報告していただく。 鷲澤淑子氏には,勤務先である石川県立図書館で所蔵している中田邦造の資料について,その追加寄贈などについて,石川敬史氏には,移動図書館に関する運営資料など,研究を通じて携わってきた資料の状況などについて,論じていただく予定である。 具体的な資料の現状を前提に,図書館史研究をめぐる資料の課題が見えてくるのではないだろうか。 登壇者1:鷲澤淑子(石川県立図書館) 「中田邦造哲学受講ノートの発見と石川県立図書館への寄贈について」 中田邦造(1897〜1956)は,1927(昭和2)年2月30歳で石川県立図書館長事務取扱となり,1940年4月東京帝国大学図書館附属図書館司書官になるまで,14年間にわたって石川県立図書館長・石川県図書館協会長として,県下の図書館行政と読書会活動を牽引した人物である。中田邦造旧蔵の書簡や原稿等は,石川県立図書館に残されており,「中田邦造関係資料」として一般に公開している。 2017年10月,中田邦造の教えのもとに鹿島郡金丸村(現中能登町)で文庫活動を行っていた経験を持つ梶井重雄氏(元北陸学院短期大学教授)の自宅より,中田邦造の京都大学時代の受講ノート24冊が発見された。ノートは,元東京都立日比谷図書館職員の長谷みどり氏の仲介により,中田邦造の息女である宮川素美氏に届けられ,2018年1月23日石川県立図書館に寄贈された。中田邦造の主任教授は西田幾多郎で,西田幾多郎の「倫理学ノ根本問題」「美の本質」などのほか,朝永三十郎「西洋哲学史」や田辺元「認識論ニ於ケル論理主義ノ限界」など他の教授陣の受講ノートも含まれている。これらは「中田邦造関係資料」の追加資料として整理され,図書館内で閲覧可能である。 今回はこのノート寄贈の経緯等に関する簡単な報告を行う。 登壇者2:石川敬史(十文字学園女子大学) 「ともに活かし継承するために ―資料の整理と利用の経験から―」 本報告では,発表者がこれまでに経験した2点を軸として報告を行い,これらの経験を通して直面した課題を共有していきたい。それは第一に,資料整理と提供の経験である。かつて大学図書館に勤務していた際,考現学の創始者・今和次郎等の特別コレクションの規程の策定,資料整理,博物館やマスコミ等への外部貸出を担当したほか,東京・社会教育史の調査から原水禁資料の整理,移動図書館史の調査から千葉県立中央図書館による移動図書館「ひかり号」関係資料の整理に携わる機会をいただいた。もちろん,こうした経験全てが図書館史研究に直結する事柄ではないが,貴重資料を整理し保存し利用に供するために,限られた予算や人,時間の限界を克服するための課題を振り返りたい。第二に,資料利用の経験である。これまでに発表者自身の研究テーマ(移動図書館史)を追究するため,数多くの方々に便宜を図っていただきながら,各地の都道府県立図書館を中心に文書館,議会図書室,県庁,私立大学図書館などで資料調査をさせていただいた。本報告では発表者の拙い経験ではあるが,各地・各機関における資料の種別や保存状況をはじめ,資料利用時に直面した課題等も具体的に報告したい。加えて,調査目的をわかりやすく確実に調査先に伝えるなど,発表者自身のこれまでの経験を見つめなおすためにも,研究倫理の観点から資料利用に関わる留意点もあわせて考えていきたい。 |
■個人発表■ | |
■発表1 | 膽吹覚(福井大学) |
「明治初期,岐阜県下に於ける元県学校所蔵書籍の行方 ―元岩邑県支那学校蔵書の払い下げと上納―」 | |
江戸時代から明治時代へと政治や社会や教育が大きく転換する時期において,藩校旧蔵書を受け継いだ県学校が,その蔵書をどのように処理したのかという問題は,日本文庫史の問題に止まらず,江戸時代から明治時代への知の継承と断絶に関わる問題でもある。 本発表ではこの問題を解明する一つの試論として,美濃国岩邑藩藩校知新館の後身である岩邑県支那学校を取り上げて,岐阜県歴史資料館所蔵「旧藩引送書類」の分析を通じて,その蔵書の行方を具体的に考察してみたい。 明治5年(1872)10月に作成された「元岩邑県支那学校書籍取調書」に拠ると,元岩邑県支那学校には「国典之部」(24点),「漢籍之部」(66点),「医書之部」(12点),「公費彫刻書籍之部」(5点),計105点(2点重複のため)の書籍が架蔵されていた。明治7年,この105点の中の102点が岐阜県に上納された。上納されなかったのは「公費彫刻書籍之部」の『六諭漢義大意』『草木撰種録』『時疫救急薬方』の3点だけであった。上納された102点の中の82点は,岐阜県によって払い下げられて,その代価(計44円66銭5厘)が岐阜県に上納された。岐阜県はこの上納金を同県下の学校で必要とされる設備,器機,書籍などの購入費に充当したと推定される。残りの20点の書籍はいわゆる珍書奇書ではなく,当時の岐阜県下の学校で利用可能な書籍であったので,県下の学校に再配架されたと推測される。 | |
■発表2 | 小林昌樹,鈴木宏宗(国立国会図書館) |
「図書館行政家としての中田邦造 ―中田邦造関係資料の利用可能性―」 | |
「中田について先行文献は,彼の提唱した「図書群」および実践した読書会活動に焦点を当てたものが主流であった。近年,附帯施設論争,戦時中の外地図書接収や,東京における図書疎開にも注目が寄せられたが,彼の昭和前期における実務面,論説面双方における存在感を十全に表しているとは言えないのではないか。1931年中央図書館長協会への関与,1934年北信五県図書館連絡会設立,そして1940年東京帝国大学司書官への転任など,読書運動の全国化を視野に入れた「図書館行政家」としての側面がもっと強調されてよい。読書会がコアにあるにしても,中田の議論は常に識字率や少年工の不良化など,当時の政治的,社会的環境とセットであったことが忘れられがちである。石川県立図書館に残された「中田邦造関係資料」を見ることで,行政や統制団体と連携した国民読書構想や,有望な図書館人の全国手配師としての中田を再発見してみたい。 | |
■発表3 | 石川敬史(十文字学園女子大学) |
「八幡市における移動図書館史 ―自動車文庫と移動児童館車の活動を中心に―」 | |
戦後,都市公民館発祥の地である八幡市(現・北九州市)において,八幡市立図書館による自動車文庫の巡回(1952年8月開始),八幡製鉄所図書館による自動車文庫の巡回(1951年12月開始),加えて八幡市民生部児童課による移動児童館車の巡回(1952年6月)という多彩な活動が展開されていた。これまでに発表者は,これら3台の自動車による活動について,巡回開始の経緯や活動の概要について実証的な分析を試み,活動の特徴を予備的に考察したうえで,今後の研究課題を明らかにした(2018年日本社会教育学会口頭発表)。 本発表では,こうした考察と研究課題に基づきながら,(1)これら自動車の巡回先を分析することにより,各活動の利用者層を検討するとともに,(2)これらの活動の担い手がどのように交わりあっていたのか,についての考察も試みる。限られた資料でもあり,本発表は中間的な報告として位置しているが,これらの考察から,官営製鉄所の設置に代表されるように殖産興業の象徴的な地域であり,数多くの流入・流出人口をはじめとしたさまざまな都市特有の問題を抱える戦後・八幡市において,こうした自動車の巡回はいかなる性格を有し,地域に何をもたらしていたのかを考えていきたい。 |