○日 程 | : | 2018年9月15日(土)・16日(日) |
○会 場 | : | 龍谷大学梅田キャンパス 研修室 (〒530-0001 大阪市北区梅田2-2-2 ヒルトンウェストオフィスタワー14階) |
○参 加 費 | : | 会員2,500円 非会員3,500円 |
○懇親会費 | : | 3,000円(会員・非会員ともに) *参加費・懇親会費は,参加当日,受付にてお支払ください。 |
○申込方法 | : | 次の事項を明記のうえ,電子メール,またはハガキにてお送りください。
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○申 込 先 | : | ■ハガキ:〒101-8301 東京都千代田区神田駿河台1-1 日本図書館文化史研究会事務局 ■電子メール:office「アットマーク」jalih.jp *上記,「アットマーク」は@に変更してください。送信件名に「研究集会参加」とお書き願います。 |
○申込締切 | : | 9月3日(月)(必着) |
●9月15日(土)● | ||||||
12:45から | 受付開始(研修室) | |||||
13:00-14:00 | 会員総会 | |||||
14:00-15:00 | ★『図書館人物事典』刊行記念シンポジウム★ | |||||
進行:奥泉和久(法政大学非常勤講師) | ||||||
登壇者: ・今野創祐(京都大学文学研究科図書館)「私の人物研究史―天野敬太郎研究から『図書館人物事典』執筆,テーマ史と関連した人物研究に至るまで―」 | ||||||
・梅澤幸平(京都外国語大学非常勤講師) 「『図書館人物事典』刊行の意義」 | ||||||
15:00-15:15 | 休憩 | |||||
15:15-16:15 | 個人発表1 | 「滋賀の図書館振興が始まったころ何を考えたか」 國松完二(京都橘大学) | ||||
16:15-17:15 | 個人発表2 | 「図書館学教育研究グループの30年」 柴田正美(三重大学名誉教授) | ||||
17:30-19:30 | 懇親会 | 月の都(大阪市北区曽根崎新地2-4-1ホテルマイステイズプレミア堂島3階) |
●9月16日(日)● | ||||||
9:45から | 受付開始(研修室) | |||||
10:00-11:00 | 個人発表3 | 「北米研究図書館史におけるハーバート・パトナムの役割」 松林正己(中部大学) | ||||
11:00-12:00 | 個人発表4 | 「『大大阪』にあらわれた図書館」 嶋崎さや香(大阪樟蔭女子大学) | ||||
12:00-13:30 | 昼食休憩 | |||||
13:30-15:00 | ★特別講演★ | |||||
「図書館史研究と図書館人物史研究」 川崎良孝(京都大学名誉教授) | ||||||
15:15-16:15 | 運営委員会(研修室) |
★『図書館人物事典』刊行記念シンポジウム★ | |
進行:奥泉和久(法政大学非常勤講師) 2017年9月,本研究会編集による『図書館人物事典』(日外アソシエーツ)が刊行された。先般の3月の研究例会では,小林昌樹氏と小生が編集委員の立場から,同書編集の経緯,課題などについて報告した。来る研究集会では,同書の執筆に携わり,また研究者・図書館員の執筆分担者の取りまとめを行った2名の執筆者にご登壇いただき,執筆の経緯を出発点にして,今後の人物研究の課題などについて報告していただく。 今野創祐氏には,天野敬太郎研究をふまえ,研究者・大学図書館員としての研究課題,これからの人物研究の展望などについて。梅澤幸平氏には,北海道・滋賀を中心に,地域における長年の図書館活動の実践をもとに,図書館現場における人物研究の意義などについて論じていただく予定である。図書館をとりまく社会,情報環境が大きく変化するなかにあって,図書館員のあるべき姿が問われている。人物研究にもさまざまな視点をもつことで,あらたな課題が見えてくるのではないかと考えている。 登壇者1:今野創祐(京都大学文学研究科図書館) 「私の人物研究史―天野敬太郎研究から『図書館人物事典』執筆,テーマ史と関連した人物研究に至るまで―」 本発表では,発表者による現在に至るまでの人物研究の遍歴について述べる。発表者は京都大学の図書系職員であるが,もともと,天野敬太郎という京都大学で長く勤務した書誌学者・目録作成者の人物研究を在野で行うことから研究活動を開始した。本発表ではまず,そうした人物研究を始めるに至った経緯について述べる。その後,発表者は社会人院生として同志社大学の総合政策科学研究科総合政策科学専攻図書館情報学コース(博士前期課程)に入学し,研究内容を人物研究から目録の歴史研究というテーマ史へと変更したが,こうしたテーマ史研究においても人物研究は密接に関連しており,テーマ史研究を進める上でも人物研究は重要であることについて説明する。また,発表者は『図書館人物事典』の執筆にも加わり,「田口高吉」の項目を執筆した。この項目執筆の過程についても発表する。最後に,筆者は現在も筑波大学の図書館情報メディア研究科図書館情報メディア専攻の博士後期課程に在籍し,目録の歴史研究というテーマ史の研究を続けているが,現在の発表者の研究において,どのように人物研究が関連しているかについて,現状を報告する。 登壇者2:梅澤幸平 (京都外国語大学非常勤講師) 「『図書館人物事典』刊行の意義」 かつて,北海道立図書館に勤務していた頃に清水正三さんから戦前の社会主義活動家を戦後顕彰した『解放のいしずえ』に唯一北海道立図書館員関位太郎が載っているので,調べてほしいとの依頼を受けた。この時に役立ったのが『北海道立図書館50年史』の巻末の在職期間を示した職員名簿であった。名簿での本人の確認と大正15年開館時の同僚職員らが判明した。職員採用の第一号の「高木ハツエ」さんの嫁ぎ先を先輩職員から教えてもらい北海道大学近くの老舗古書店に訪ねることができ,当時関位氏が亡くなって50年近く経過していたが等身大の話を聞くことができたことは僥倖だった。同時に名簿の役割の大きさを知った。 その後,滋賀県で仕事をする中で,暗礁に乗り上げていた『滋賀の図書館 ’93』の編集を任された際に,この時期に滋賀県の図書館づくりに尽力していた県内職員全員の名簿を作成して載せることを提案したのは記録を残すことの意味を『北海道立図書館50年史』から学んだからであった。当時の西田博志八日市市立図書館長から,「滋賀の図書館を支えてきた職員名が記録されたことはよかった」と意義を認めてくれた。 今回の『図書館人物事典』の刊行も,これからの図書館研究の手がかりを示した労作として,その意義を高く評価したい。 |
★特別講演★ | |
川崎良孝(京都大学名誉教授)「図書館史研究と図書館人物史研究」 本報告はアメリカを対象に図書館人物史研究(自伝も含む)についての単行書レベルの業績を広く渉猟することで,人物史研究の歴史を追い,その歴史的な経過,特徴,動向,および現在の到達点を明らかにする。その場合,単なる主要業績の紹介を回避するために,全般的な図書館史研究との関連を特に意識して,それとの関連で図書館人物史研究の展開を追求することにする。まず全般的な図書館史研究の研究史を総括したのち,素朴な賞賛型の人物史研究の時期(第1期),資料の収集や用い方で学術的な意味を有する研究の時期(第2期),それに従来のオーソドックスな研究にたいして批判的な姿勢を有する研究の時期(第3期)に大別して,おのおのの時期の主たる業績と特徴を探る。なお全般的な図書館史研究の歴史的展開については以下を参照。川崎良孝・吉田右子『新たな図書館・図書館史研究:批判的図書館史研究を中心にして』京都図書館情報学研究会発行, 日本図書館協会発売, 2011年9月, 402p. |
■個人発表■ | |
■発表1 | 國松完二(京都橘大学) |
「滋賀の図書館振興が始まったころ何を考えたか」 | |
滋賀県の図書館振興は昭和56(1981)年度,県独自の建設費補助,図書購入費補助,移動図書館購入費補助等の補助施策がスタートしたころである。戦後30年,他の都道府県では『市民の図書館』(1970年,日本図書館協会刊)の示す新しい公共図書館の考え方に市民,図書館員が触発され,次々と図書館が整備されている中で,滋賀県には新しい図書館づくりの波は波及せず公共図書館不毛の時代が長く続いた。 その後,滋賀県のいわゆる図書館振興策が昭和56年にスタートして以降,市町村立図書館の整備は急速に進み,現在では,19市町に48図書館が整備され,設置率は100%,図書館サービスの活動度合を測る指標のひとつである「人口1人当たりの貸出冊数」は,長年にわたって東京に次いで高い数値を示し,「図書館県滋賀」といわれて久しい。 この時期の活動については,主に全国各地から招聘された図書館長の多くが著作や論文で語られ周知のことであるが,この前後に県立図書館の職員として仕事をスタートさせた立場から,当時の滋賀の課題,予約リクエストサービスの導入,協力貸出,協力車の運行等の事業を中心に,滋賀の急激な図書館の状況の変化をどのように捉え,日々の業務に生かしていったかについて論じる。 | |
■発表2 | 柴田正美(三重大学名誉教授) |
「図書館学教育研究グループの30年」 | |
「第1次」は,1972年12月に活動を開始し,当時の事務局長であった高橋重臣さんが中心になって,1978年頃まで研究活動を実施していたようである(『日本図書館研究会の50年』 日本図書館研究会,1996.11,p.74-75)。図書館学教育の現状を改善するための研究と提言を行ったようであるが,詳細は,記録が残されていないため不詳となっている。 「第2次」は,1986年12月の近畿地区図書館学科協議会において塩見昇さんが提起した「司書講習規程の改正を研究しよう」という案を背景に1987年2月に再開されたものである。 研究例会は,2ヶ月に1回程度の割合で重ねられ,30年以上にわたって,すでに,180回を数えている。 この30年間のグループの研究活動を振り返り,研究発表等で活躍した人たちを分析し,また取り上げたテーマの傾向を見るなかで,グループの成果を確認する。とともに,今後に期待される展開について述べる予定である。 | |
■発表3 | 松林正己(中部大学) |
「北米研究図書館史におけるハーバート・パトナムの役割」 | |
1899年に米国議会図書館(以下LC)館長に就任したハーバート・パトナム (Herbert Putnam)は,1902年に外部機関であるカーネギー研究所ワシントン(以下CIW)の書誌委員会委員にも指名されるが,LCの立場では委員会に貢献できず,個人で研究基金を申請して,全米での学術研究機関総覧の編集経費を獲得する。総覧刊行後も,LC手稿部とCIW歴史委員会を連動させて,LCでは推進しにくい学術活動と図書館経営の合理性を追求した橋渡し役を演じていることが,研究図書館史調査での一端で確認できる。 パトナムの図書館界への貢献は,LCカード目録頒布等が主な業績とされているが,LC経営を戦略的に進めた彼の成果の一部であって,全体から見ると付随的な産物でしかない。主としては,議会,行政(大統領)と司法へのサービスを目標においた業務計画で進められ,研究図書館運動全体の流れを踏まえて遂行した専門職人事と外部学術機関との連携が活きた事業推進であった。今回は破綻したUniversity Center for Research in Washington設置計画の事例を整理して,20世紀前半の学術研究体制における研究図書館の位置付けを試みる。 学術界の動向に関与した関係者(William Warner Bishop, Andrew Carnegie, John Franklin Jameson, Andrew Keogh, Waldo Gifford Leland, Theodore Roosevelt, Woodrow Wilson, etc.)と関係機関(American Library Association, American Council of Learned Societies, American Historical Association, Association of Research Libraries, Carnegie Institution of Washington, Carnegie Corporation of New York, National Research Council, etc.)との事実関係を復元して,パトナムが研究図書館(research libraries)に与えた影響の意義と関係性を考察する。 | |
■発表4 | 嶋崎さや香(大阪樟蔭女子大学) |
「『大大阪』にあらわれた図書館」 | |
1925年,大阪市は第二次市域拡張を行い,面積・人口・工業生産額において,日本最大の都市へと躍り出た。この市域拡張の年に大阪都市協会が創刊したのが,雑誌『大大阪』(大正14年〜昭和19年)である。執筆者には大学教授や経済人,市の幹部職員の名前が見える。雑誌には,都市計画や労働問題の論考から市政ニュースやイベント告知まで様々な情報が掲載され,図書館に関する情報も含まれている。 本発表は雑誌『大大阪』の中で,(1)図書館がどのような観点から論じられていたのか。特に国内最大の都市となった大阪市に求められた図書館とはどのようなものであったのか検討する。また,(2)市域の拡大や人口の増加に対して,具体的に必要とされたサービスとは何であったのかについても明らかにしたい。さらに,(3)児童や女性,労働者といった人々が新たな図書館利用者として取り込まれていく過程についても言及する。 以上の検討を通じて,大正末から昭和戦前期における大阪の図書館事情の一端を捉えたい。なお,上記の問題を多角的に考察するために,大阪市立図書館の館報や新聞記事なども援用する。 |