日本図書館文化史研究会
2017年度研究集会・会員総会のご案内

 2017年度日本図書館文化史研究会研究集会・会員総会を下記のように開催します。
(後援:山形県立米沢女子短期大学)
*一部情報を更新しました(9/12)
○日  程: 2017年9月16日(土)・17日(日)
○会  場: 山形県立米沢女子短期大学 C号館201教室
(〒992-0025 山形県米沢市通町六丁目15-1)

○交  通: JR山形新幹線米沢駅からタクシーで15分
※路線バスもありますがかなり本数が少ないのでタクシーでの ご移動をお勧めします。

○参 加 費: 会員2,500円
非会員3,500円

○懇親会費: 6,500円(会員・非会員ともに)
*参加費・懇親会費は,参加当日,受付にてお支払ください。

○懇親会会場: 招湯苑(しょうとうえん)※米沢牛をいただきます
(〒992-0039 山形県米沢市門東町1-4-5)[詳細・アクセス]

○申込方法: 次の事項を明記のうえ,電子メール,またはハガキにてお送りください。
  • 氏名(ふりがな)
  • 所属
  • 会員,非会員の区分
  • 懇親会参加の有無
  • 図書館見学希望の方はその旨を記してください。

○申 込 先 : ■ハガキ:〒101-8301 東京都千代田区神田駿河台1-1 日本図書館文化史研究会事務局
■電子メール:office「アットマーク」jalih.jp
*上記,「アットマーク」は@に変更してください。送信件名に「研究集会参加」とお書き願います。

○申込締切 : 8月11日(金)(締め切りました)

○その他 : ●招湯苑(しょうとうえん)は旅館でもありますので,懇親会の後そのままお泊りいただくこともできます。お手数ですが,詳細・ご予約は招湯苑にお問い合わせください(TEL.0238-21-5066)。
●招湯苑と米沢女子短期大学は徒歩で30分と離れておりますので,その点ご注意ください。
●会場となる米沢女子短期大学は比較的郊外に位置しています。米沢市内には多数ホテル,旅館がございますが,市街地にありますので会場まではタクシーでのご移動が便利です。
○プログラム


●9月16日(土)●
12:10から受付開始(C号館2階201教室)
12:25-12:30開会あいさつ
12:30-13:20会員総会 *会費の値上げなどについて審議予定です。
13:20-13:30休 憩
13:30から研究集会
13:30-14:30★基調講演★「近世日本の書物と情報―地域社会における『知』の蓄積と継承のあり方をめぐって―」
小林文雄(山形県立米沢女子短期大学)
14:30-14:50質 疑
15:15-15:30 *バスで移動
15:30-17:00 市立米沢図書館見学
17:10-17:30 *バスで移動
17:30から懇親会招湯苑(しょうとうえん)(〒992-0039 山形県米沢市門東町1-4-5)[アクセス]


●9月17日(日)●
9:30から受付開始(C号館2階201教室)
 午前司会:泉山靖人(東北学院大学)、吉植庄栄(東北大学附属図書館)
9:45-10:45個人発表1「床屋(理髪店)文庫をめぐって」
佐藤友則
10:45-11:45個人発表2「海辺の図書館―東日本大震災から活用される地域アーカイブへ―」
庄子隆弘(海辺の図書館)
11:45-12:45昼食休憩
 午後司会:鈴木宏宗(国立国会図書館)、松崎博子(就実大学)
12:45-13:45個人発表3「市島謙吉(春城)の図書館研究」
藤原秀之(早稲田大学図書館)
13:45-14:45個人発表4「中央図書館制度の実施過程に関わる研究」
松本直樹(慶應義塾大学文学部)
14:45-15:00休 憩
15:00-16:00個人発表5「東北帝国大学附属図書館の蔵書形成―ミュンスターベルク文庫 再構成の試み―」
小川知幸(東北大学)
16:00閉 会※16:20発バスで米沢駅まで送ります。
16:00-17:15運営委員会(C号館2階201教室)


★基調講演★ 「近世日本の書物と情報−地域社会における『知』の蓄積と継承のあり方をめぐって−」 小林文雄(山形県立米沢女子短期大学)
 近世文化史研究では,近世社会を文字社会ととらえる青木美智男氏・網野善彦氏の問題提起以来,近世の人びとにとって文字を読み書きすることがどのような意味をもっていたかを問う研究が増えてきた。
 こうした関心のもと,報告者も,近世後期における関東の庶民蔵書をとりあげ,多方面にわたる「知」が上層農民の家に蔵書という形で蓄積され,さらにその蔵書が地域住民に貸し出される事例があったことを紹介したことがあった。また,このような蔵書を形成した家が,書物をめぐる「知」の拡大・浸透に重要な役割を果たしていたと考え,文化的な公共性が地域社会のなかに芽生えていく可能性を指摘した。
 今回は,米沢置賜地域の幕末〜明治頃の蔵書をいくつか紹介しつつ,蔵書という形で蓄積された「知」が,地域の人びとにとってどのように生かされたのか,蔵書の持つ意味が近世を通じてどのように変化していくのか,再考してみたい。とくに,蔵書の使われ方,読まれ方に注目して,階層や身分をこえて,蔵書が広く地域に共有されていき,それによって新たな「知」と人びとの結びつきが地域社会にもたらされる,という側面がとらえられれば,と考えている。


○ 個人発表要旨
■個人発表■
 ■発表1 佐藤友則
 「床屋(理髪店)文庫をめぐって」
 大正期は通俗教育の展開のために,様々な社会教育機関において,様々な社会教育活動が行われていた。この時期,各地で設置が急激に増えていた図書館も,この通俗教育を担う機関として,社会教育のために多種多様な活動を行っている。そのような図書館が行っていた活動の中で,特徴的であり盛んだった活動として,各種の巡回文庫や文庫設置の活動があげられる。これは,日常生活の様々な場所に本を持っていき,本を用いた社会教育を行う活動であった。今回の発表では,巡回文庫や文庫設置という活動の中でも,理髪店や床屋に設置されていた,いわゆる床屋文庫(理髪店文庫)について発表を行う。床屋文庫については,資料の不足やあっても断片的な記載にとどまっており,実態を見るには制約が多い。その中で,文庫について書かれた文献や各種の通俗調査から,設置にいたる意識を探ってみた。また各地での設置状況についても検討を試みることで,床屋文庫の活動の実態や,その意義について発表者のここまででわかったこと,考察したことを報告する。
 ■発表2 庄子隆弘(海辺の図書館)
 「海辺の図書館―東日本大震災から活用される地域アーカイブへ―」
 海辺の図書館は,東日本大震災で津波被害を受けた仙台市若林区荒浜にある本も建物もない図書館です。人が住むことができない「災害危険区域」に指定された荒浜には,かつて約800世帯,2,200人が生活していました。私もその1人です。これまでの荒浜での生活や文化が震災によって失われ“なかったこと”にされたくないという思い,また,豊かな海辺や歴史ある貞山運河といった自然環境を背景に,これからの未来を考えていく場として,荒浜という地域全体を図書館に見立てる「海辺の図書館」の発想に結びつきました。これまで,震災前の写真と現状を比較しながら歩くまちあるきツアーや,砂浜を舞台にした能楽の上演など地域の記憶・記録を伝える取り組みをしてきました。こうした取り組みが評価され,2016年には第5回東北未来賞を受賞しました。本発表では,海辺の図書館が行ってきた取り組みの紹介と,誰もが知る現代の公共図書館や学校図書館とは違った“ちょっと異色な図書館および本のある空間の歴史”を紐解きながら,地域と図書館(的なもの)の可能性を考察します。
 ■発表3 藤原秀之(早稲田大学図書館)
 「市島謙吉(春城)の図書館研究」
 東京専門学校が早稲田大学と改称されたときの図書館長であり,日本文庫協会第3代会長(日本図書館協会初代会長)としても知られる市島謙吉(春城)は,政治家,ジャーナリストとしての側面を持つばかりではなく,近世文芸,古書画,印章など多方面にわたる趣味人でもあった。そうした彼だからこそ,盟友の高田早苗から「君は図書館の経営に当るがよからう,静かにやれる仕事だから病後の君には適する,ヤツテ見給へ,図書館は案外趣味のあるものだ」と誘われたときに,「喜んで直ちに諾した」わけだが,一方で「実は其頃まだ図書館の管理法や西洋流の目録の編成法などを心得てゐな」い状況でもあった。(「 」はいずれも『随筆早稲田』早稲田大学の今昔<図書館の建設>,翰墨同好会,1935年,による)そんな春城がいったいどのようにして,それまで無縁であった図書館運営に関する専門的な知識を得ていったのか。今回の報告では春城自身の残した言葉を通じてそのことを検証してみたい。具体的には彼が刊行した随筆集に見られる図書館関係の言葉,さらには未刊自筆資料に収載された図書館関係の記録を調査することで,市島春城が単なる趣味人としての興味だけで図書館経営にあたったのではなく,深い見識と,新しい知識をもった専門家として図書館経営の実務に携わっていた事実を確認してみたい。
 ■発表4 松本直樹(慶應義塾大学文学部)
 「中央図書館制度の実施過程に関わる研究」
 1933年に改正された図書館令により中央図書館制度が創設された。中央図書館制度では,管内の図書館を指導し連絡統一を図らせるため,文部大臣は道府県内の1館を中央図書館と指名すべきことが規定された。そして,その具体的活動については,図書館令施行規則で図書館経営に関する調査研究及び指導,図書館書籍標準目録の編纂など8項目が定められた。また,中央図書館の館長については公立図書館職員令により管内図書館の事務視察の規程が設けられた。中央図書館制度は,戦後における初期の図書館法改正運動の際に制度化が検討されたが,大図書館中心主義等と批判され制度化に至らなかった。また,「図書館の自由」の観点から,戦前の図書館における思想善導を支えた制度的基盤とされ批判がなされた。しかし,こうした批判があるにもかかわらず,中央図書館制度に関わる実施局面,特に,中央図書館の指定や実施を支えた細則(県令)の実態,指導・視察の実態等は十分明らかとなっていない。本研究では,中央図書館制度について,主に実施過程を中心に,当時の政策文書や各種調査から明らかにしていく。
 ■発表5 小川知幸(東北大学)
 「東北帝国大学附属図書館の蔵書形成―ミュンスターベルク文庫再構成の試み―」
 東北大学附属図書館は2016年度において400万冊をこえる蔵書を誇る国内有数の図書館であるが,同館が50以上の「特殊文庫」を所蔵していることは意外にも知られていない。特殊文庫とは,旧蔵者の名前を冠し,一括して排架したものである。個人名がつくことから個人文庫とも称されている。ケーベル文庫,漱石文庫などがその一例である。同館はなぜこのような文庫を作りあげたのであろうか。そのきっかけは,東北帝国大学の創設(1911年),とりわけ現在の法・文・経済学部の前身である法文学部の設置(1922年)と戦間期の世界情勢に大きく関わる。その結果として購入されたドイツ人旧蔵者の7つの文庫(ゼッケル,チーテルマン,シュタイン,ヴント,シュマルソー,ミュンスターベルク,ヴォルチェンドルフ)が特殊文庫として整理され,蔵書の中核をなしたことで,伝統が形づくられたのである。しかし,これらの文庫には「第二特殊文庫」と称して,一般蔵書のなかに混排されたものもある。また,重複本として売却された図書も少なくないことが判明した。本発表では,ミュンスターベルク文庫再構成の試みを通じて,東北帝国大学附属図書館の蔵書形成の思想とその歴史的背景を考察する。

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