日本図書館文化史研究会
2010年度研究集会・総会のご案内

 2010年度日本図書館文化史研究会研究集会・総会を、下記のように開催します。
 ■オプショナルツアー(A・B)がありますので,ぜひご参加ください。
 
案内PDF版(第三版)(310KB)

○日  程: 2010年9月11日(土)-12日(日)
○会  場: 実践女子大学本館4階442教室 (東京都日野市大坂上4-1-1)
○交  通: JR中央線日野駅下車、徒歩約12分
実践女子大学アクセスマップ
 ●実践女子大学が会場です。実践女子短期大学ではございませんのでご注意ください。
○参 加 費: 2,000円 懇親会会費6,000円
○申込方法: 次の事項を明記して、下記まで電子メール、ファックス、または葉書でお申し込みください。
  • 氏名(ふりがな)
  • 所属
  • 懇親会参加の有無
  • オプショナルツアーA・B参加の有無
○申 込 先: 321-3295 宇都宮市竹下町908
作新学院大学 司書・司書教諭課程
小黒 浩司
電子メール:oguro@sakushin-u.ac.jp
ファックス:028(670)3671
○申込締切: 2010年9月5日(必着)


○プログラム
●第1日:9月11日(土) オプショナルツアー・会員総会・シンポジウム
10:30-11:30 ■オプショナルツアーA 日野市立中央図書館見学会(日野市豊田2-49 JR中央線豊田駅南口下車徒歩6分)
 ・10:20 日野市立中央図書館玄関前集合
 ・参加定員25名(先着順に受け付けます。)
 *見学終了後は,タクシー相乗りで実践女子大学へ移動予定です。
   
12:00- 受付開始
   
12:30-13:30 会員総会
   
13:40-17:00 シンポジウム「『市民の図書館』40年」(仮)
 13:40-13:50 開会挨拶 
13:50-14:20 シンポジウムの趣旨 奥泉和久(横浜女子短期大学図書館)
14:25-15:05 報告1 森下芳則(前田原市図書館)
15:10-15:50 報告2 山口源治郎(東京学芸大学)
16:00-17:00 全体討論
   
17:30-19:30 懇親会
  • 会場 : 浜寿司 本店(日野市多摩平5-9-8 TEL:042-581-2259)
  • 参加費: 6,000円

●第2日:9月12日(日) 個人発表4件・オプショナルツアー
10:00-10:55個人発表1 「市民の図書館」を実践する:日野宿発見隊の活動
  渡辺 生子(日野市立日野図書館分館長)
10:55-11:50個人発表2 第二次大戦中の中国における日本軍接収図書の研究
  鞆谷 純一(大阪市立大学大学院創造都市研究科)
   
12:30-12:55■オプショナルツアーB 実践女子大学図書館見学会
 ・12:25 実践女子大学本館1階図書館前集合
 ・参加定員25名(先着順に受け付けます。)
 *12:00〜13:00までの間,自由見学も可能です。
   
13:10-14:05個人発表3 伊東平蔵と東京市立図書館の設立
  吉田 昭子(東京都立中央図書館)
14:05-15:00個人発表4 「『佐野友三郎訳 デイクソン英文典直訳 攻玉社蔵版』共益商社書店、明治二十年」考
  小川 徹
15:00-16:00 運営委員会 


○シンポジウム要旨・発表要旨

 シンポジウムの趣旨および要旨
 シンポジウムの趣旨 奥泉 和久
  『市民の図書館』(日本図書館協会, 1970)が刊行されてから、今年で40年になります。
 『中小都市における公共図書館の運営』(中小レポート)(日本図書館協会, 1963)の実現をめざして日野市立図書館がスタートし、日野の実践したサービスを全国に普及させるべく『市民の図書館』がつくられたことはよく知られているところです。その日野市にキャンパスを構える実践女子大学で本年の研究集会、併せて「『市民の図書館』40年」とのテーマでシンポジウムが行われることになりました。
 『市民の図書館』は、1970年代以降の公共図書館のあるべき姿を描き、これまで図書館界では絶大な支持を得てきました。同書について多くの実践が報告され、図書館サービスや図書館史のテキストなどにも必ずといってよいほど概説がなされ、そこでは戦後の図書館の歩むべき道筋を主導したとの評価が定着しているといってよいと思います。
 ところが、1990年代以降の新自由主義的な政策にもとづく図書館法改正、民営化の推進などの動きのなかで、それまでの『市民の図書館』観の転換を促すサービス論が展開されました。これらには図書館をとりまく情報環境の急激な変化も背景にあり、現在の図書館サービスを再検討する必要から提起されたとの見方もできるようです。これに対し反論もなされたのですが、『市民の図書館』の歴史的な意義をめぐる論議はかみ合わず、未消化のまま現在に至っているように思われます。それだけに歴史研究として『市民の図書館』をとりあげようとするときの課題でもあるといえるでしょう。
 そこで森下芳則氏(前田原市図書館)には、日野市立図書館で実際にサービスを実践された体験に基づいて、同館の果たした役割などを中心に、ご自身による検証を期待しています。また、その後田原市図書館長として新しい図書館づくり、図書館経営にかかわったお立場から、現在『市民の図書館』をどのようにとらえているのかについてもお考えを聞かせていただきたいと考えています。
 山口源治郎氏(東京学芸大学)は、上に述べたような『市民の図書館』をめぐる論議に関して、これまでにも発言されています。それらを含め、あらためて現時点において『市民の図書館』を歴史研究の対象とするための論点整理をお願いし、さらには本格的な『市民の図書館』研究のための視座をいかにして形成したらよいかなどについて検討していただきたいと考えています。
 報告者、参加者による活発な議論を期待しています。
 報告1 森下 芳則 コロンブスの卵とアルキメデスの支点
  70年代、日本の公共図書館にイノベーションがあった。理念が共有され、技術や条件が整った。『市民の図書館』には停滞する図書館状況を突破しようとする強い意志と危機感があった。
 図書館員として仕事をしていく上で大事なことは二つ。図書館は社会の中でどのような役割を果たすのか、何のために図書館はあるのかということを理解すること。もう一つは、顧客、利用者は、図書館に何を求めているのかを探り、それに応えること。普遍的で、どのような仕事にも共通する初心。私は図書館の現場と『市民の図書館』から学んだ。
 報告2 山口 源治郎 『市民の図書館』と公共図書館の戦後体制
  『市民の図書館』が刊行され40年が経過した。それは今日においても強い規範性を保っているとともに、論争的な存在であり続けている。『市民の図書館』は1970年代初頭に成立した公共図書館の「戦後体制」の重要な要素として存在した。そこに強い規範性の根拠がある。同時に今日、「戦後社会」の転換に直面し公共図書館のあり方が問われている。本報告ではそうした事柄を踏まえ、『市民の図書館』成立の背景、その構造的特徴、歴史的・社会的意義を、公共図書館の「戦後体制」という視角から分析したい。

個人発表要旨
 発表1 渡辺 生子(日野市立日野図書館分館長)
 「市民の図書館」を実践する:日野宿発見隊の活動
 日野市立図書館の分館、日野図書館では図書館職員がまちへ飛び出し、住民と共にまちのお宝や古い写真などを発見する活動をしています。図書館の活動がまちおこしにもつながり、まちを変えていく。住民に役にたつ図書館めざして、住民とともに作っている活動、有山氏がめざした「市民の図書館」をまさにその地元から発信します。
 発表2 鞆谷 純一(大阪市立大学大学院創造都市研究科)
 第二次大戦中の中国における日本軍接収図書の研究
 第二次大戦中の日本軍は、中国において多くの図書を接収していた。接収した図書の種類は、抗日文献、政府刊行物、古典籍など様々である。接収図書の用途も、一様ではなく、占領地で研究用として活用されたり、製紙処理されたりしている。そして接収図書の一部は、東京帝国大学附属図書館や帝国図書館といった我が国を代表する図書館に搬入されていた。
 今回の発表では、論者がこれまで重ねてきた研究をまとめ、中国における日本軍接収図書について、その全体像を素描し、併せて論者の見解を表したいと思う。
 発表3 吉田 昭子(東京都立中央図書館)
 伊東平蔵と東京市立図書館の設立
 伊東平蔵(1856-1929)は、東京外国語学校教授をつとめ、私立大橋図書館、宮城県立図書館、私立佐賀図書館、横浜市図書館等で設立準備や運営にあたった。日本で初めての図書館講習会の開催を推進するなど、図書館分野で多くの業績を残している。
 伊東は明治30年代から始まる東京市立図書館設立準備においても、重要な役割を果たした。東京市立日比谷図書館設立準備段階で、伊東がどのように関わったのか、それが東京市立図書館の設立に与えた影響を検証してみたい。
 発表4 小川 徹
 「『佐野友三郎訳 デイクソン英文典直訳 攻玉社蔵版』共益商社書店、明治二十年」考
 佐野友三郎は、明治30年代から大正期にかけて、秋田・山口の県立図書館長として日本図書館史上名を残していますが、帝国大学文科大学和文学科学生のとき、英語・英文学担当の James Main Dixon教授がテキストとして出版した“English lessons for Japanese students”を翻訳しています。このことはこれまで紹介されることがなかったと思うので、まだ分らないところがありますが、若き日の佐野の一面を物語るものとして報告をします。

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