日本図書館文化史研究会
2008年度研究集会・総会のご案内


 2008年度日本図書館文化史研究会研究集会・総会を、おおむね下記のように開催することになりました。多くの方の参加を期待します。
 なお、個人発表の内容など詳細につきましては、決定次第、ニューズレターおよび研究会のウェブサイトにてお知らせします。
 講演・発表の要旨を追加しました。(2008.7.23)
 申込締切を過ぎましたが、引き続き参加申し込みを受け付けております。当日参加も可能ですが、なるべく事前にお知らせください。(2008.9.2追記)

案内PDF版(要旨付)(250KB)

○日  程: 2008年9月14日(日)・15日(月・祝)
○会  場: 工学院大学・新宿キャンパス 28階第1会議室(新宿区西新宿1-24-2)
○交  通: JR各線・小田急線・京王線・地下鉄各線「新宿駅」下車、徒歩5分
都営地下鉄大江戸線「都庁前駅」下車、徒歩3分
工学院大学新宿キャンパスアクセスマップ
○参 加 費: 3,000円(懇親会参加費5,500円)
○ご 注 意: 宿泊は、各自でご手配ください。
○申込方法: 次の事項を明記して、下記まで電子メール、ファックス、または葉書でお申し込みください。
  • 氏名(ふりがな)
  • 所属
  • 懇親会参加の有無
○申 込 先 : 321-3295 宇都宮市竹下町908
作新学院大学 司書・司書教諭課程
小黒 浩司
電子メール:oguro@sakushin-u.ac.jp
ファックス:028(670)3671
○申込締切 : 2008年8月31日(必着)


○プログラム
第1日:9月14日(日)
13:00- 受付開始
13:15-14:00 会員総会
※ 審議未了の案件がある場合、2日目の個人発表終了後に引き続き審議します。
14:00-15:30 特別講演1 竹内 セ 「21世紀の図書館協力」と「本のみち」―IFLA ソウル大会に因んで―
15:45-17:00 特別講演2 阪田 蓉子本間一夫と日本点字図書館
 
17:30-19:30 懇親会
  • 会場 : イタリア料理 アクイラ ニグラ(新宿区西新宿2-3-1 新宿モノリス1F 03(3342)0007)
  • 参加費: 5,500円


第2日:9月15日(月・祝)  個人発表4件
10:00-11:00 個人発表1 琉米文化会館の二重構造
   古波蔵 剛
   
11:00-12:00 個人発表2 青年図書館員聯盟の図書館革新運動と『ファシスト的公共性』:楠田五郎太の「動く図書館」を中心に
   米井勝一郎(愛知県立大学学術情報センター)
   
12:00-13:00 昼食休憩 ※ 昼食は、会場周辺のレストランなどをご利用ください。
 
13:00-14:00 個人発表3 スロベニア共和国「国立大学図書館」の建築について−ヨージェ・プレチュニックの遺したもの−
   岡野裕行(相模女子大学非常勤)
   
14:00-15:00 個人発表4 ブリティッシュ・ライブラリーの起源:国立中央図書館の役割とその意義
   藤野 寛之(聖トマス大学)
   
15:00-17:00 運営委員会 


○講演要旨・発表要旨
特別講演要旨
特別講演1 竹内 セ 「21世紀の図書館協力」と「本のみち」―IFLA ソウル大会に因んで―
  2006年8月、ソウルでのIFLA大会のプレ・コンフェレンス、“Scholarly Information on East Asia in the 21st Century” において、’Early Book Paths as Preface to Library Cooperation’ という拙稿を発表するという機会を与えられた。その概要を報告する。
1.図書館協力は、異なる文化をつなぐ橋である。それを築くためには、IT技術の検討とともに、異文化間の敬意に基づく相互理解を根柢とする。
2.そのためには、東アジアにおける「本の道」―生産・流通と他の地域への伝播、受容、活用―の比較研究によって、その共通点と相違点とを知ることが必要である。
3.比較研究の前段階には地域研究がある。その一例として、日本文化の形成に大きく寄与した中国・朝鮮からの「本の道」を、江戸末期まで概観したい。
特別講演2 阪田 蓉子 本間一夫と日本点字図書館
  日本点字図書館の創設者本間一夫氏の功績を「図書館」の視点から検証したいと考えています。
 本間氏は視覚障害者の読書施設として日本点字図書館を開設しました。既に視覚障害者の自立のための施設、職業の場を広げるための施設として、日本ライトハウスが存在しており、点字図書の出版事業も手がけていました。この日本ライトハウスとは別に、視覚障害者のための「図書館」を建設したいという願望は、彼の中学時代の経験にもとづいています。本を読みたい、しかし、点字図書の数が限られており、しかも種類も職業訓練のための本が大半であったことから、読書施設設立の夢を抱いていたことに起因します。
 第二に、本間氏が点字図書館創立に際して、蔵書を増やすために採用したのは、ボランティアの支援により、点字図書を作成するという方法でした。さらに注目すべき点は、ボランティア活動を開始するに際して、まず、ボランティアの養成から始めていることです。図書館サービスにおけるボランティア養成の先駆者として、本間一夫の採用した方法、アイディアについて、本間氏が書き残した文書を通して、再考したいと考えています。

個人発表要旨
発表1古波蔵 剛
琉米文化会館の二重構造
 第二次世界大戦におえる日本の敗戦により、沖縄は27年間に及ぶアメリカ軍隊の占領支配を受けた。それは何事においても軍事政策を優先する統治であり、沖縄住民はその専横さに喘いでいた。
 そのような時代、米軍占領政府(米国民政府)は琉米文化会館(Ryukyu-American Cultural Center)という文化施設(図書館)を自ら運営し、沖縄住民へ開放、さまざまな文化サービスを提供していた。その主な活動が図書館運営であった。これは敗戦直後に日本各都市に設置されたCIE図書館と同様の施設である。しかし、CEI図書館の活動が5年から7年程度であったに対し、琉米文化会館は1951年から1972年の沖縄の日本復帰まで存在、活動している点が大きく異なる。
 この会館は当時の沖縄を5つのブロックにわけ、名護、石川(現うるま市)、那覇、宮古(平良市、現宮古島市)、八重山(石垣市)の五箇所に設立された。また名瀬市(現奄美市)には奄美琉米文化会館がおかれていた。つまり、一部の離島を除くほぼ全琉球をサービスエリアとしていた。
この会館ではアメリカ式の近代的図書館サービスが実践され、当初から開架式であった。
 琉米文化会館を運営したいたのは占領米軍政府であったが、そこで働き直に沖縄人同胞へとサービスを提供したいたのは沖縄人スタッフらであった。設置者米軍政府と沖縄人スタッフらの、この会館によせる意識の「ズレ」を当時の米軍公文書と、筆者が行った元スタッフ数名に対するインタビュー記録(聞き書き)をもとに検証を試みる。
発表2米井勝一郎(愛知県立大学学術情報センター)
青年図書館員聯盟の図書館革新運動と『ファシスト的公共性』:楠田五郎太の「動く図書館」を中心に
 図書館文化史研究においては、敗戦前昭和期の図書館活動の評価については、二つの分裂した見解(戦争被害者か、加害・共犯的立場)が併存しているようである。
 今回の発表は、個人の主体性や自主性が総力戦体制というシステムに動員されることを明らかにした近年の総力戦体制に関わるゥ研究を参考にして、敗戦前昭和期における青年図書館員聯盟による図書館革新運動について、その有力なメンバーであった楠田五郎太の「動く図書館」を中心に、今後の分析の見通しを得ることを目的に纏めてみたものである。
発表3岡野 裕行(相模女子大学非常勤)
スロベニア共和国「国立大学図書館」の建築について―ヨージェ・プレチュニックの遺したもの―
 中欧に位置するスロベニア共和国は、イタリア、オーストリア、ハンガリー、クロアチアに囲まれた人口約200万人の小国である。同国の国立図書館は「国立大学図書館」の名称で市民に親しまれており、国内最大規模の国立図書館であると同時に、首都リュブリャナに位置するリュブリャナ大学の附属図書館の機能を兼ね備えたものとなっている。同館の建築設計は、スロベニア国内を始めとして、ウィーン、プラハ、ベオグラードなどの中欧の周辺都市にも作品を遺したスロベニアを代表する建築家、ヨージェ・プレチュニック(1872?1957年)が手がけた数ある作品のうちの一つとして有名である。本発表では同図書館の建築構造を中心として取り上げ、その歴史や機能についても簡単に触れてみたい。
発表4藤野 寛之(聖トマス大学)
ブリティッシュ・ライブラリーの起源:国立中央図書館の役割とその意義
ブリティッシュ・ライブラリー(BL)の成立とともに、その貸出部門の一部として編入された国立中央図書館は、1916年に学生のための貸出図書館として出発していた。その後、1931年に国立中央図書館と名称を変え、イギリス全土の公共図書館のクリアリング・ハウスの役割を担うようになった。すなわち、資料の中央ストックを構築するとともに、地域図書館局に「総合目録」を編纂させる仕事に取り組んだのであった。この図書館は戦時期の爆撃によって、その機能を問われるまでとなり、1969年には国立図書館委員会の勧告によって、BLの一部局に編入された。前身機関から数えても60年に満たない歴史であった。
 この図書館を単なる「消え去った」過去の図書館と見るか、あるいは、20世紀中葉に行われたイギリス図書館界の実験と見るかは、現代の図書館を考察するうえで重要な意味を持つ。国立中央図書館の活動は、国の中央貸出機構の実現という姿で、いまなおBLに引き継がれて生きているからである。イギリスは図書館間の協力という課題を中央貸出館の設置という形で実行に移したわけであり、その意義はきわめて大きい。本研究は、この国立中央図書館の活動をイギリスの「図書館協力体制」の実現という視点から検討することを意図するものである。


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