日本図書館文化史研究会
2015年度研究集会・会員総会のご案内

 2015年度日本図書館文化史研究会研究集会・会員総会を下記のように開催します。

○日  程: 2015年9月5日(土)・6日(日)
○会  場: 白百合女子大学 2号館 R2008教室
(〒182-0001 東京都調布市緑ケ丘1-25)

○交  通: 京王線新宿駅より25分,「仙川駅」下車,徒歩10分
小田急バス JR吉祥寺駅・三鷹駅(いずれも,駅南口のバス停7番)より各30分,「白百合女子大学入り口」下車,徒歩5分

○参 加 費: 会員2,000円
非会員3,000円

○懇親会費: 4,000円
*参加費・懇親会費は,参加当日,受付にてお支払ください。

○申込方法: 次の事項を明記のうえ,電子メール,またはハガキにてお送りください。
  • 氏名(ふりがな)
  • 所属
  • 会員,非会員の区分
  • 懇親会参加の有無

○申 込 先 : ■ハガキ:〒101-8301 東京都千代田区神田駿河台1-1 日本図書館文化史研究会事務局
■電子メール:office「アットマーク」jalih.jp
*上記,「アットマーク」は@に変更してください。送信件名に「研究集会参加」とお書き願います。

○申込締切 : 8月31日(月)(必着)

○ご注意 : 白百合女子大学図書館は,両日とも閉館日のため見学いただけません。
大学までの経路につきまして,南側の正門は,6日(日)終日閉鎖されます(5日(土)も工事の関係で閉鎖される可能性があります)ので,東門からのご入場をお願いいたします。


○プログラム
●9月5日(土)●
12:30-13:30運営委員会
13:30から受付開始 
13:45-14:25会員総会 
14:25-14:30開会挨拶 
14:30-15:30個人発表1「全国高等諸学校図書館協議会における図書館分類をめぐる議論」
津村光洋(広島大学)
15:30-16:30個人発表2「地域の文化資源と図書館を結ぶことについての一考察」
岩井千華(九州大学大学院)
17:00-懇親会


●9月6日(日)●
10:00-11:00個人発表3「図書館との関係からみた東京帝国大学における学術的知の形成」
河村俊太郎(愛知淑徳大学)
11:00-12:00個人発表4「中央図書館長協会とその周辺」
鈴木宏宗(国立国会図書館)
12:00-13:30昼食休憩*構内カフェテリアは休業となります。
   
13:30-16:50★シンポジウム★「日野市立図書館50年と現代の公立図書館」
  
13:30-14:00 基調講演  山口源治郎(東京学芸大学)
14:00-15:30 シンポジウム (コーディネータ・山口)
        パネリスト:久保田正子(日野市民)
              森下芳則(元・日野市立図書館職員,前・田原市立図書館長)
              座間直壯(元・調布市立図書館長,特定非営利活動法人共同保存図書館・多摩 理事長)
              田中ヒロ(元・都立多摩図書館職員,日野市立図書館協議会委員)
15:30-15:45 休 憩
15:45-16:45 討 議
16:45-16:50 閉会挨拶


★シンポジウムの主旨★ 日野市立図書館50年と現代の公立図書館
 今年度の研究集会シンポジウムでは,戦後日本の公立図書館のあり方と実践に「図書館革命」をもたらした日野市立図書館の50年を,歴史的に検討しその成果と課題を明らかにすることを通して,戦後公立図書館を次の歴史的ステージにつなげたいと思う。
 1965年9月21日,日野市立図書館の移動図書館ひまわり号がサービスを開始した。以来,日野市立図書館が取り組んできた実践とその思想は,よく知られているように『市民の図書館』(1970年)で示された戦後公立図書館モデルの基礎となった。しかしまた,日野市立図書館がこの50年間に蓄積してきた実践や理論的提起は,「当面の重点」である「貸出し」,「児童サービス」,「全域サービス網」の重視に止まるものではなく実に多彩である。
たとえば,利用者を個(=市民)としてとらえ,そこに女性や子どもを正当に位置づけたこと。図書館を移動図書館,分館,中央図書館からなる有機的に組織されたシステムと見ること。移動図書館からはじまり分館,中央図書館へと,市民の身近なところからサービス網を構築する図書館づくりの方法。予約・リクエストサービス,障害者サービス,市政図書室活動に見られる地域資料サービスや行政・議員活動への支援。図書館建築そして専門職員集団の形成などである。シンポジウムではこうした50年の実践とその課題について検討してみたい。
 また日野市立図書館の実践は,まず近隣の多摩地域の図書館に,そして大都市近郊自治体の図書館実践に決定的な影響を及ぼし,70年代以降の公立図書館の飛躍的発展の契機をつくり出した。しかし他方で,多摩地域では日野市立図書館の実践や『市民の図書館』の理念を共有しつつも,自治体ごとに個性的な図書館づくりも試みられている。こうした中で,多摩地域の図書館員は日野市立図書館の50年をどう見てきたのか。さらに日野市民は日野市立図書館とどのように関係してきたのか,こうした側面はこれまであまり語られることはなかったように思われる。シンポジウムでは,日野市民,多摩地域の図書館員,元日野市立図書館職員の目から,日野市立図書館の50年の意味や課題を検討してみたいと思う。
 こうした議論を通して,より厚みと深みのある日野市立図書館像や公立図書館像が浮かび上がるのではないか,そのことが次への展望を切り開く契機になるのではないかと期待している。(文責・山口源治郎)


○ 個人発表要旨
■個人発表■
 ■発表1 津村光洋(広島大学)
 全国高等諸学校図書館協議会における図書館分類をめぐる議論
 1924年(大正13),京都で最初の全国専門高等学校図書館協議会が開催された。この協議会は,その後,全国高等諸学校図書館協議会と名称を変えて1941年(昭和16)まで毎年開催され,帝国大学を除く全国の大学,専門学校などの図書館によって構成される,戦前では最大規模の高等教育機関の図書館協議会となった。毎年発行された同協議会の『会報』から,これまで十分研究されてきたとはいえない戦前のわが国の高等教育機関の図書館の分類の状況や,標準分類作成をめぐる議論の経過が分かるので,それらについて報告する。同協議会での議論の流れは,当初の全ての学校の標準分類を作成すべきという考え方から,商業学校,農業学校や高等学校など学校の種類ごとの標準分類の作成へと向かってゆく。しかし,実際に作成されたこれらの標準分類は,結局十分活用されることはなかった。こうした活動から十分な成果が得られず,戦後になって高等教育機関におけるNDCによる分類の共通化が実現した大きな要因として,戦前から戦後への高等教育の学校制度そのものの変化を挙げることができる。
 ■発表2 岩井千華(九州大学大学院)
 地域の文化資源と図書館を結ぶことについての一考察
 図書館はこれまで図書館法に則り,「図書,記録その他必要な資料を収集し,整理し,保有して,一般公衆の利用に供し,その教養,調査研究,レクリエーション等に資することを目的とする施設」として,郷土資料,地方行政資料,美術品,レコード及びフィルムの収集にも十分留意して,図書,記録,視聴覚教育の資料その他必要な資料を収集し,一般公衆の利用に供することを図書館奉仕,人々への公的サービスとしてきた。しかし,図書館法には地域の「文化資源」を扱うという考え方や意識が記されておらず,「文化資源」ということに対して図書館で働く人々の認識も低いのではないかと考える。「文化資源」とは,「ある時代の社会と文化を知るための手がかりとなる貴重な資料の総体であり,建物や都市の景観,あるいは伝統的な芸能や祭礼など,有形無形のもの」を指すが,地域では評価や活用がなされないままになっているものであり,これを発見し再評価し活用する試みが,地域によって利用され支えられている図書館には求められていると考える。以前短大図書館で司書をしていた筆者が現在所属する研究室は,研究対象の一つとしてまちづくりやそれにかかわる文化資源を扱っており,疲弊した地域に入り地域の文化資源発見ワークショップを行うが,そこに図書館関係者の姿は無い。図書館は室内で貸出返却など既存のサービスをするだけでこれからも地域住民から必要とされるのだろうか,もっと危機感を持ち地域の文化資源に真剣に取り組んだ方がよいのではないかと危惧している。加えて,地域における課題解決型図書館が叫ばれて久しいが地域の文化資源の認識抜きのレファレンスは無いのではないか。地域にある文化資源を発見する試みとしてのワークショップと,この4月に開館した沖縄の恩納村文化情報センターの文化資源収集とその見せ方・活用事例を通し,文化資源を内包した図書館のあり方を考察する。
 ■発表3 河村俊太郎(愛知淑徳大学)
 図書館との関係からみた東京帝国大学における学術的知の形成
 東京帝国大学は,日本の学問の一つの中心であり,日本の学術的知を規定してきた存在であるが同時に,各部局が強く独立傾向を持っていた。したがって東京帝国大学の学術的知については,各部局(学問)についての検討はありつつも,それが東京帝国大学という一つの組織の中でどのように形成されてきたのかという点については十分に検討されてこなかった。そこで,本発表では,すべての学問に共通した物理的な場所や蔵書を持った学術的知の基盤として図書館組織をとらえ,この図書館の形成から学術的知の形成を明らかにする。具体的には,文学部心理学研究室図書室,経済学部図書室,附属図書館といった図書館,さらには図書館商議会,大学のモデルから検討を行っていく。
 ■発表4 鈴木宏宗(国立国会図書館)
 中央図書館長協会とその周辺
 日本の図書館史上重要な1933年(昭和8)の改正図書館令は,後世「附帯論争」や中央図書館制度などの点で言及されることが多い。同令と関連する団体として昭和前期には,中央図書館長協会(昭和6年10月7日〜昭和18年5月19日)が存在していた。同協会については,今まで焦点をあてた研究は見当たらない状態であり,部分的に昭和8年の改正図書館令の中央図書館制度に関連してすこし触れられているか,または見るべき活動を行うこともなかったと記されている。その実態や活動についてはあまり知られていないと言える。しかし,主に道府県立図書館長がメンバーになっている同協会について考察することは,その活動が活発であったか不活発であったかいかなるものであれ,改正図書館令期の公共図書館の研究を行う際の一助になるのではないかと考えられる。そこで,同協会の成立時の状況や背景,関連する会議としての中央図書館長会議等についても言及しながら,主としてその活動の紹介を行う。

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