日本図書館文化史研究会
2014年度研究集会・会員総会のご案内

 2014年度日本図書館文化史研究会研究集会・会員総会を下記のように開催します。

○日  程: 2014年9月6日(土)・7日(日)

○会  場: 熊本学園大学
(〒862-8680 熊本市中央区大江2丁目5番1号)

○交  通: 阿蘇くまもと空港から,空港バス約25分
  ・熊本都市バス 熊本駅・熊本交通センターから「学園大前」停留所すぐ
  ・熊本市電 電停「味噌天神前」より 徒歩約15分
  ・JR豊肥本線「水前寺駅」より 徒歩約10分

○参 加 費: ・本研究会会員・JLA図書館情報学教育部会会員いずれも2,000円
・非会員3,000円

○懇親会費: 4,000円
*参加費・懇親会費は,参加当日,受付にてお支払ください。

○申込方法: 次の事項を明記のうえ,電子メール,またはハガキにてお送りください。
  • 氏名(ふりがな)
  • 所属
  • 懇親会参加の有無
  • 初日施設見学の有無
  • このほか,有志による「ゆるやかツアー」[詳細]も企画されています。こちら参加ご希望の方は,ひと言お書き添えください。

○申 込 先 : ■はがき:〒862-8680 熊本市中央区大江2丁目5番1号 熊本学園大学 山田美幸研究室
■電子メール:office「アットマーク」jalih.jp
*上記,「アットマーク」は@に変更してください。送信件名に「研究集会参加」とお書き願います。

○申込締切 : 9月2日(月)(必着)
*本研究会では宿泊先手配はしません。お早めにお願いします。


○プログラム
●9月6日(土)●
      ■ 施設見学(10:00-12:00) 熊本県立美術館見学会

 熊本県立美術館は,熊本城の二の丸公園の一角に位置し,古代から現代美術までを網羅する総合美術館として1976年3月に開館しました。2008年4月には「細川コレクション永青文庫展示室」(別棟)が開館し,熊本ゆかりの永青文庫の名品を常時見ることが可能になっています。今回は,細川コレクションの展示内容を,学芸員の方に解説していただきながら見学したいと思います。

■ 研究集会・会員総会
13:30から受付開始 
13:55-14:00開会挨拶 
14:00-15:30特別講演1「永青文庫史資料の世界とその可能性」
稲葉継陽氏
15:30-15:40休憩
15:40-17:10特別講演2「九州における図書館学教育の歴史
―西日本図書館学会の創立と司書講習の果たした役割―」
佐藤允昭氏
17:30-19:15懇親会熊本学園大学内グリル


●9月7日(日)●
9:30-10:15会員総会
10:15-11:00   『(仮称)図書館人物事典』作成報告
11:00-12:00個人発表1「現職者の再教育として始まった司書講習の果たした役割」
 川原亜希世
12:00-13:00休憩
13:00-14:00個人発表2「戦後日本における図書館情報専門職の教育史
―司書・司書教諭養成および図書館情報学教育―」
 吉田右子,中村百合子,松本直樹
14:00-15:00個人発表3「明治期の「苦学」の変化の図書館論への影響―雑誌『成功』を中心として―」
伊東達也
15:00-15:05閉会挨拶
15:15-16:00運営委員会


○ 特別講演・個人発表要旨

■特別講演■
 講演1 稲葉継陽(熊本大学永青文庫研究センター)
 永青文庫史資料の世界とその可能性
  現在,熊本大学附属図書館には,熊本藩主として幕末を迎えた近世大名細川家伝来の歴史資料・書籍を中心とした史資料群が寄託されている。これらは,明治維新後に細川家の菩提寺・妙解寺の跡に置かれた邸内の蔵に収蔵されていたもので,1964〜66年に財団法人永青文庫から熊本大学へと寄託された。点数は4万3,000点を超える。この寄託史資料群が「細川家史資料」である。
寄託以来,熊本大学の各学部の専門分野では同史資料群を教育・研究に活用し,大学内外の研究者からは多くの研究成果がうみ出されてきた。そうした活動の延長線上に,2009年には,文学部附属永青文庫研究センターが設置され,附属図書館と連携しながら総目録の作成や出版活動等を展開してきた。
数ある大名家史資料群のうちでも,「細川家史資料」の構成・内容には,他に見られない特徴がある。本史資料群を活用した研究や地域貢献の可能性について,それを管理する附属図書館との連携面にも言及しながら,お話ししたい。
 講演2 佐藤允昭(元・別府大学)
 九州における図書館学教育の歴史―西日本図書館学会の創立と司書講習の果たした役割―
 今から61年前,昭和28年(1953)11月13日西日本図書館学会は誕生した。そのきっかけとなったのは司書講習である。
昭和25年(1950)4月30日に図書館法が公布され,公共図書館の専門職員としての司書・司書補の職制が法律の上で明文化された。翌年から図書館法による司書講習会が開催されるようになり,第1回は東北・東京・慶應義塾・名古屋・京都および九州の6大学において実施されている。西日本図書館学会はこの第1回の九州大学司書講習会修了生の有志で結成されたのである。戦後間もない混沌とした時代のなかで,司書講習は学会創設にどのような役割を果たしたのか。講演ではそのいきさつを,当時の司書講習を紹介しながら報告したい。
■個人発表■
 発表1 川原亜希世(近畿大学短期大学部)
 現職者の再教育として始まった司書講習の果たした役割
 1950年に公布された図書館法の第5条により,司書は講習と大学教育によって養成されることになった。法律施行時の現職者は,5年間の暫定資格を認められ,この間に講習を受けることで,その後も資格を認められることになった。つまり講習は現職者を再教育し,司書(補)資格を与えるために始まったのである。講習は1951年に始まり,最初の3年間で公共図書館,大学図書館,国立国会図書館,学校図書館から約3,800名が受講した。
 当時の状況を伝える資料が,東京大学大学院教育科図書館情報学研究室に保管されている。研究室の初代教授であった裏田武夫が残したもので,昨年度,保存処理と電子化を行った。1952〜53年に8つの大学で行われた講習について,実施要項,受講者名簿,教材,テスト,受講者アンケートなどが残されている。本研究ではこれらの資料をもとに,当時の司書講習の受講者(=現職者)に焦点を当て,初期の司書講習が果たした役割について考察を行う。
 発表2 吉田右子(筑波大学),中村百合子(立教大学),松本直樹(大妻女子大学)
 戦後日本における図書館情報専門職の教育史―司書・司書教諭養成および図書館情報学教育―
 本研究は,日本の図書館情報専門職養成教育を,司書課程,司書教諭課程,専門課程の3領域に分けて,戦後のそのそれぞれの形成過程と展開を,歴史資料に基づき検証するものである。
 研究方法としては,3領域において,組織によって公にされてきた文書を,一次資料を含めて網羅的に収集,整理,検討した。具体的には,法律(案を含む),省令,審議会・各種会議の答申,図書館関連団体からの要請文書や制度案,文部省(文部科学省)への各種申請書などを対象とした。それらの資料をもとに,養成教育の制度化に向けた取り組みと戦後の展開,新たな教育機関の立ち上げ,またそうした動向に関わる図書館界,教育界の議論などを,時代背景を踏まえて整理し,検討した。そして,領域ごとに時代区分を行った。
 発表においては,さらに検討を進めて,領域間の関連を示したい。そして,日本の図書館情報専門職養成教育の特質にも言及する予定である。
 発表3 伊東達也(春日市民図書館)
 明治期の「苦学」の変化の図書館論への影響―雑誌『成功』を中心として―
 近代日本における図書館の社会的機能の形成過程を明らかにするために,雑誌メディアのなかで図書館という存在がどのようなものとして語られてきたのについて検討する。
 明治期の公共図書館の特徴として,学生と称される青少年の就学者の利用が多かったことがあげられるが,この時期の学生の中には,上京して働きながら学ぶことで立身を遂げようとする青年が多くあった。学校以外の学びの場として図書館が認識されるようになることについては,このような「苦学」のために利用されたことの影響が大きいと考えられるが,当時の苦学生に広く読まれ,その指針を提供した雑誌に『成功』がある。
 時代の変遷によって「苦学」の内容とともに『成功』の論調も変わり,そこで説かれる図書館論にも変化がみられる。図書館というものが当時の学生や有識者からどのような存在と認識され,それがどう変わっていったのかを『成功』を通して明らかにする。

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